2025.06.12
幹部動機づけ(5)
前回では「ほとんどの企業では最も重要な戦略の立案・遂行の場合《制約条件》にとらわれてしまい、戦略の実現がうまくいかないのが現状である。そんな中私は「なんとか戦略を計画通りに進めていく方法はないものか?」そんな思いをもって、コンサルタントとしての仕事をしていた時、ある会社の経営戦略発表会へ出かけて行った。それが冒頭の発表会での加藤社長の言葉である。
加藤社長は半年間をかけて、戦略の立案に取り組んだ。前日は夜中まで発表会の準備をし、高揚して発表会に臨んだ。
そんな中加藤社長は演壇から《自社の生き残りのための方向性や具体策》を訴えた。
ところが社員席に緊張感や緊迫感が全くない、中には私語を交わすものさえ見られる。ほとんどの社員があまり真剣に聞いていないという状況だった。
彼の高揚感と社員席の雰囲気のギャップから、次第に彼の言葉は上ずりだしてきた。
それでも、幹部の中には誰一人として、その場の雰囲気を注意するものもいない。私は思わず危険を感じ司会者に一時中断を進言した。しかし一瞬遅かった。加藤社長の怒りが頂点に達してしまった。
そして”ふざけるな俺はもう知らん”という言葉を残し、会場から出て行ってしまった。慌てて彼を控え室まで追いかけた私に
『幹部たちにはあれほど時間をかけて説明し、部下たちにも今回の戦略の大切さを理解させておくようにといったのに・・・・。
社運を託す覚悟で作り上げたというのに・・・。こんな会社やっていても意味がない』とまで言った。
加藤社長は泣いていた。私も一緒に涙した。