BLOG

経営戦略発表会の最中、加藤社長は演壇を蹴飛ばし、会場から飛び出してしまっ  た。
今でも忘れられない光景だ。

当時、私は大手のコンサルタント会社に在籍し、クライアントの業界動向や環境変化を徹底的に分析・予測して経営戦略を策定していた。

相手の経営者とも徹底して話し合い、会社の今後数年間にわたる経営戦略を立案する。
必死に取り組んだ戦略を策定し終えた時の満足感は非常に大きいものがあった。

加藤社長も私たちとともに半年間をかけて自社の戦略策定に取り組んだ。
前日は夜中まで準備をし、高揚して中期経営計画の発表会に臨んだ。
加藤社長は全社員を前に演壇から《自社の生き残りのための方向性や具体策》を訴えた。

ところが会場全体に緊張感が感じられない。
中には私語を交わす者さえ見られる。
ほとんどの社員が真剣に聞いていないという状況だった。
彼の高揚感と会場の雰囲気のギャップから、次第に彼の言葉は上ずりだしてきた。
それでも幹部達は誰一人として、その場の雰囲気を注意する者もいない。

ついに加藤社長は怒りが頂点に達してしまった。
そして『ふざけるな、私はもう知らん』という言葉を残し、会場から出て行ってしまった。
あわてて彼を控室まで追いかけた私に、「幹部にはあれほど時間をかけて説明し、部下にも今回の戦略の大切さを理解させておくようにと言ったのに…社運を託す覚悟で作り上げたというのに…こんな会社やっていても意味がない」とまで言った。

加藤社長は泣いていた。私も一緒に涙した。

この事件が私の「幹部の動機づけ」の原点でした。その事件以来、私は、企業の存続と成長のためには戦略の策定よりも、 “情熱に満ち溢れた一体感のある組織づくり” の方が重要なのではないかと感じるようになりました。